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安藤 榮作

プロフィール

2021年ギャラリー勇斎「安藤榮作 彫刻展・Left behind heart」に寄せるメッセージ

3.11東日本大震災から10年。
あの日、福島県いわき市の海岸沿いに住んでいた我が家は、家と仕事場と保管してあった数百の作品、そして家族の一員だった愛犬のユイを大津波で失った。翌12日には30㎞北で福島第一原発が爆発。放射能の被害を恐れ私たちは避難を開始した。新潟や東京の実家を行き来しながら2か月半後に本格的に奈良県に避難移住した。
関西には親戚もなく友人知人も皆無に近く、勝手の分からない関西での生活と仕事の一からの再建にただただ必死の10年だった。日々を感じ入ったり、20年間暮らした心のふるさと福島への郷愁に浸る余裕もなかったように思う。
それまでの生活の循環がプツンと途切れたあの日以来、どこにも辿り着けない流浪の旅に出てしまった感じで、いつになったらどこへ行けば何をやれば着地した安堵感が得られるのか宙ぶらりんの感覚のままだ。
 震災と原発事故の中、福島とその隣県の人たちは、様々な情報や考えそして親族や職や地域との繋がりに翻弄されながら自分の進む方向を決断してきた。そこには支え励まし合いもあったし、心無い蔑みや罵倒もあった。家族や友人知人と考えや意見が合わず決裂を経験した人もいたし、抱き留め合う新たな出会いを経験した人もいた。
福島に残って頑張って生きてきた人、福島を出て死に物狂いで生きてきた人、福島に自宅があるのに放射能高線量被災地のため結局帰れず家を解体した人、全ての人の歩みが唯一無二の尊い経験だ。震災当初の生き方の違いによる衝突やいがみ合いはこの10年の間にお互いの選択を理解し認め許し合う心へと溶けていった感じもする。
10年経った今も私の中に広がるのは、福島を置き去りにした気持ちと福島を思い慕う心。
 毎年3.11を挟んだこの時期の展覧会では被災者避難者として原発事故に絡んだ何らかのハードなメッセージを発信してきた。でも震災から10年の今年は私の中の内なる宝、福島の海や山や風や人を彫刻にしてみようと思う。福島を置き去りにした切なさと今も福島を思い慕う暖かさが会場に広がったらうれしい。

  
               安藤榮作 彫刻家


安藤栄作・プロフィール

1961年 東京下町生まれ。
1986年 東京芸術大学彫刻科を卒業。
1990年 福島県いわき市の山中に移住し、2006年同市の海沿いに引っ越す。
2011年 東日本大震災にて被災、原発事故を機に奈良県に避難移住する。
2017年 第28回平櫛田中賞受賞。
2019年 第10回円空賞大賞にて円空賞受賞。
*原木や廃材を手斧1本で彫り刻み、具象抽象にとらわれず、ダイナミックな生命エネルギーを形にし続けている。

<近年の主な展覧会>
2005年 アジアの潜在力・海と島が育んだ美術(愛知県立美術館)
2009年 大地の芸術祭・越後妻有アートトリエンナーレ(松代農舞台ギャラリー・新潟)
2011年 「いま。つくりたいもの。伝えたいこと」(いわき市立美術館)
2013年 「光のさなぎたち・安藤栄作展」(原爆の図 丸木美術館・埼玉)
2014年 「祭、炎上、沈黙、そして。。。POST 3.11」(東京都美術館)
2015年 「水と土の芸術祭」(新潟市)
2016年 「いま、被災地から・岩手・宮城・福島の美術と震災復興」(東京藝術大学大学美術館) /「つくることは生きること・震災[明日の神話]展」(川崎市岡本太郎美術館)
2017年 「第28回平櫛田中賞受賞記念・安藤榮作展《SOUL LIFE SPIRIT》」(井原市立田中美術館)
2019年 「もやい展 」 (金沢21世紀美術館)
2020年 「第10回円空大賞展―希求、未来への創造―」 (岐阜県美術館)
* 他、個展・グループ展・パフォーマンス・作品設置など多数。


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